Inkscape で写真のネコをトレースします
2020年5月に新しくリリースされたInkscape 1.0 を使ってネコの写真をトレースして可愛いイラストにします。描きながら色々なツールの操作方法を盛り込み、完成する頃にはある程度Inkscapeを使いこなせる様になる事を目指します◎
なので少し長めで同じ解説も何度も出てきます。順番も行きつ戻りつ最短ではありません。
Inkscapeで写真をトレースしながら操作方法を覚えましょう
目次
フリー素材サイト:PAKUTASO パクタソ
フリー素材を提供しているPAKUTASOさんのサイトへ。「お持ち帰り猫」の画像を使わせてもらいます。同じ画像をお使いになる場合は上の検索窓に、、
ID番号の35252と入れるとこのベージが開きます。
規約を確認して頂いたらサイズはどれでもいいのですがMをダウンロードしました。
1600×900pxサイズのjpg画像、ダウンロード完了。
Inkscape に画像を入れる
ネコ画像を下に敷く為、取り入れます。ファイル>インポート
小窓が降りてくるので画像を選択、Openを押します。
画像のインポート形式ですが埋め込み、リンクこの場合はどちらでも大丈夫なのでデフォルトのままOKします。
左上「選択ツール」で画像をクリックすると周りに矢印が出ますのでcontrolキーを押しながら動かすと比率を保ちながら拡大、縮小出来ます。
虫眼鏡の「ズームツール」は画面の大きさを変えられるので今回は結構使うツールです◎これを選択すると上に「+,−」の表示が出て大きさを変えられます。(こんな感じで左で選んだツールによって上の表示は変わります)
Inkscape レイヤーで分ける
最初に開いた時、デフォルトではレイヤーは1つです。この1つのレイヤーの上で全部の作業をしてもいいのですが今回の様な場合いくつかのレイヤーに分けて作業をすると整理しやすいですし今後も使えるやり方です。
もし画面の右側にレイヤーの窓が出ていなかったら右下の三角マーク>レイヤーで出します。
現在レイヤーは1つです。このレイヤーにネコの画像があります。
なので目のマークをクリックして瞑ると、写真は見えなくなります。
写真の他に何か描いていたらそれも見えなくなっているはずです◎
レイヤーをロックする
複数のレイヤーに分ける理由の1つにロックする為というのがあります。デフォルトでは開いている鍵マークをクリックすると閉まったイラストになり、そのレイヤーが動かせなくなります。今回はネコの写真をロック、動かない様にしてその上に作った別のレイヤーの中でトレースしてイラストを描きたいのです。
レイヤーの内容が分かる様に「レイヤー1」を「ネコの画像」などと書き換えます。+マークを押してレイヤーを追加します。
写真をテープで止めてトレシングペーパーを上に載せてなぞるのと同じだね
選択していたレイヤーがデフォルトで入っているので、、
書き換えます。位置はデフォルトだと新しいレイヤーほど上に作られます。位置は後からでも変えられるのでこのままで「追加」します。
ロックのかかっていない2つ目のレイヤーが出来ました。下の矢印で位置を変えられます。「−」で選択したレイヤーを削除する事も出来ます。
ネコの顔_輪郭のトレース
写真の準備が出来たのでネコのトレースをしていきます。まずはベースの輪郭からです。
どのツールで描くか方法は色々ありますが今回はペンツールを多用します。輪郭の半分を描いて「コピペ」→「反転」→「統合」で1つにしようと思いますので、まずは顔半分のアゴの下辺りをペンツールでポチッとします。
Inkscapeのペンツールを使いこなす
2つ目の点をポチッとしたらマウスを離さず少しだけグッと(進む方向に)伸ばします。すると先に丸が付いた2本のハンドルが出て、これが後から微調整するのに役立ちますし滑らかな線になるので今回の様な柔らかい物を描くのに適しています。
Bがその様にして描いた線です。見にくいですが→の所に丸の付いたハンドルが出てます。Aはカチッカチッとマウスをすぐに離す描き方です。線がカクカクするので直線的な物、工業製品など描く時に便利です。
慣れるまで少し練習が必要ですがペンツールを使いこなすと自由に物が描ける様になると思います◎
Inkskapeのペンツール2分動画(音は出ません)。カーソルの周りが丸くなっている時はクリックかドラッグしている時です。
ペンツールで描いている途中ですが線に色を付けて見やすくしようと思います。
途中でも大丈夫なの?
続けて出来るから大丈夫
画面右下の三角からフィル/ストロークを選択します。(この場所に項目が無い時は上のメニューバーのオブジェクト>フィル/ストロークでも出せます)
色をつける フィルとストローク
RGB HSL〜どれで色を決めても良いのですが、直感的に選べるホイールのタブをクリックします。
「フィル」は内側の塗り色で、「ストローク」はその周りの線の色です。今はネコの輪郭を線で描いているのでストロークを選び、(人によってはこの時点では三角&丸の色の図は出ていないかもしれません)×マークの隣の四角(単一色)をクリックして線の色を決めます。
「ストロークのスタイル」は線の太さや形状(点線など)を変えられます。幅を太くして見やすくしました。
輪郭の続きに戻ります。
ペンツールを選択します。描き途中の所にカーソルを持って行くと赤い四角が出ます。そこをクリックして続けられます。(赤い四角が出ない状態でクリックすると別の線として認識されます)
続きなのですが先ほどのフィル、ストロークで決めた線(黄色の太い線)はまだ表示されません。
最後も1番始めの部分に赤い四角が現れたらクリックして閉じます。顔の輪郭半分が出来たので複製して2つをくっ付けて完成させようと思います。
編集>コピー、編集>貼り付けします。
複製した方は上のメニューにある「選択オブジェクトを水平方向に反転』します。位置を微調整して合わせます。
2つのパーツはこの様に重なっていても大丈夫です◎ 2つとも選択した状態でパス>統合をクリックします。
1つのパーツが出来ました。真ん中にあった線も消えています。
整列と配置
整列と配置は複数の図形を一瞬で綺麗に並べられるので非常に便利です。
額から口周りにかけての白い毛の部分を別パーツで作ろうと思います。同じくペンツールで半分だけ作ってコピペします。この2つのパーツを揃える(その後「統合」で1つに)ために「整列と配置」を使います。(輪郭の時に説明すれば良かったですね)右下の三角マークで選択します。
2つを選択した状態で基準の選択範囲を「最小オブジェクト」にします。その後「下端で揃える」をクリックします。
下のラインで2つの図形が揃いました◎
もう少し「整列と配置」について書きたいと思います。
揃えたい図形が2つの時は「最小オブジェクト」の横のマーク「Treat selection as group(選択をグループとして扱う)」が押されていても大丈夫なのですが、、
3つを整列させようとするとちゃんと揃いません。
押されていなければ揃います◎
ちゃんと揃わず「?」という事があったらここをチェックです
縦ラインで揃えたり等間隔で並べたり他にも使える機能がたくさんです。
イラストの続きに戻ります。
揃えた後に2つをパス>統合で1つにしました。すると余計なくぼみが出来てしまいました。ここを無くしてスッキリさせたいと思います。ノードツールを選択します。
消したい点をクリックすると(カーソルが当たっている時は赤)青になります。上のメニューでマイナス表記の「選択したノードを削除」をクリックします。点が1つ消えました。もう1つ右の点も消しました。
(図の下)赤い線あった方が見やすい時は上のメニューの「パスのアウトラインを表示」を押すと表示されます。
カクッととんがった所を丸く滑らかにしたい時は「選択ノードの種類をスムーズに」を押します。
グループでひとまとまりに
毛の濃い部分、模様をペンツールで描きました。5つに分かれているのでこれをひとまとまりにします。
オブジェクト>グループ化。
点線の囲みが大きな1つになってグループになった事が分かります。
グループにする利点はまとめて同じ作業をしたい時(例:色を変えたい、動かしたい)にいちいちバラバラのパーツを選択しなくていいという事でしょうか。作業が楽で速くなります。
たまたま茶色い模様という同じ色のグループになりましたが色、形状、好きにグループに出来ます。グループの必要がなくなったらオブジェクト>解除をすれば個別に扱えます。
パスの分割
顔の色を上の茶色と下の白に分けたいので輪郭を「編集>コピー、編集>貼り付け」します。左のツールバーから「円/弧ツール」を選び楕円を作ります。
輪郭と楕円を選択した状態で「整列と配置」の「中心を垂直軸に合わせる」
続けてパス>分割で、、
色分けしたい2つのパーツに分けます。
順番の入れ替え。前面に移動、背面に移動
描いた順番が新しい物ほど上に来ます。
なので今描いた物をネコの画像の上に移動すると模様や鼻の白い所などが後ろに隠れてしまいました。順番を入れ替えて見えるようにします。「最背面に移動」をクリックします。
もしくは「模様や鼻の白い所、耳の穴」を選択して「最前面に移動」でも◎
ちゃんと見えるようになりました。
こんな状態です。
次は目鼻口など描きたいのですが、パーツが増えてごちゃごちゃしてきたのでレイヤーを増やして整理してからにしようと思います。
ネコの顔_目鼻口のトレース
今までトレースとしていたレイヤー名「トレース_顔ベース」などと書き換え、プラスマークを押します。
新しく出来る3個目のレイヤーに「トレース_目鼻口」など名前を付けて追加を押します。
ここからは「トレース_目鼻口」レイヤーの上で作業します。「トレース_顔ベース」は見えない方が下の写真が見えて便利なので目を閉じ、ついでに動かないようにロックもしておきます。
ペンツールで瞳の輪郭をとります。ノードツールで微調整します。瞳の中の光を円/弧ツールで描きます。色は画面の下にずらっと並んでいる色のサンプルをポチッとしてもOKです。
スポイトツールで画面上から色を採取する
色を付けるのにスポイトツールを使う方法もあります。白目のブルーが綺麗なので同じ色にしたいと思ったらスポイトツールでクリックするだけで選択していた所がその色になります。
写真でもイラストでも大丈夫です
描いた順番で白目のブルー部分が一番上に来てしまったので「最背面に移動」します。目は表情を決める重要なパーツなのでノードツールで細かく調整します。
目の周りの黒い部分を描くと「猫目」っぽくなるね
目もひとまとまりのグループにして、、
編集>複製し、(複製した物は同じ場所に出来るため、「?」と思いがちなので気をつけてください◎)水平方向に反転させます。この後は手作業で揃えてもいいですし「整列と配置」で揃えても。
ストローク(線)のスタイル(形状)
ペンツールで口を描きます。フィル/ストロークのストロークで色を付け、「ストロークのスタイル」で太さをと形状を決めます。デフォルトでは線の端が一番左の角ばった状態になっていると思います。
それを丸く優しい印象にする事が出来ます。線が太い時などはかなり印象が変わります。(角もカクッとさせるか丸くするか決められます。)
線(ストローク)をパスに変換
線(ストローク)をパスに変換するとノードツールなどで細かく加工できます。
線で描いた口を選択してパス>ストロークをパスに変換。
線で無くなりアウトラインが出来ました。そのままパス>統合で1つにします。
ノードツールで動かし口を作ったり微妙なニュアンスを加ます。
レイヤー「トレース_顔ベース」を見える状態にすると全体が見えて来ました。
。。。ちょっと怖いね
目が怖いですね、グラデーションで暗くして少し奥に引っ込んだ表現をします。
色のグラデーション
グラデーションツールで、目の青い部分をダブルクリックします。すると四角と丸の付いた棒が横いっぱいに出ます。これのどちらかを持って自由に動かしグラデーションを調整します。丸に行くほど透明になっているので、このイラストの場合後ろのグレーが透けて見えて暗くなっています。
白目のグラデーション部分を動かしてみると上のような状態です。色も調整できるので少し明るい水色にしました。
目の後ろに模様も入れます。これは模様なのでレイヤーは「トレース_顔ベース」で作業します。この時「トレース_目鼻口」レイヤーはロックしておくと動かなくてやりやすいです。
「選択オブジェクトを背面に1段階移動」で濃い模様の後ろに移動しました。もう一度同じ事をして額の白い部分の後ろに配置します。
ヒゲをペンツールで描きます。一度選択(クリック)すると上のような矢印が出て、もう一度クリックすると下のように四隅の矢印がカーブします。すると回転、傾かせる事ができます。
ネコのイラスト完成
(「トレース_顔ベース」のレイヤー上で鼻の下にベージュの丸2つ追加しました)完成、とします。
レイヤーごとの解説
今回は作業がし易いように3つのレイヤーに分けて描きました。(「まとめ」レイヤーは解説のため) 文字を追加したら「テキスト」レイヤーなども作るかもしれません。作業が終わって(途中でも)このレイヤーとこのレイヤーはくっ付けた方がいいと思う事もあると思います。
レイヤー1:猫の画像
画像は他とはかなり性質が違うので1つのレイヤーにして作業が終わるまでロック(鍵マークをクリックして固定)しました。
レイヤー2:トレース_顔ベース
輪郭、毛の模様など。ここのレイヤーは今後ネコの種類(ブリティッシュショートヘア、アメリカンショートヘア、ベンガル、、)ごとに増やすという展開も。
レイヤー3:トレース_目鼻口
今回の中では細かいパーツ。レイヤー2をロックして基本非表示にして時々表示して色や雰囲気を合わせて作業する事が多かったです。
自分がやり易いようにレイヤー分けします
Inkscakeで作業していると度々イラストが薄くなっている事がありまして、気付かずレイヤーの下の「不透明度」を操作してしまっている事がありました。「あれ?薄くなってる」と思ったらここをチェックです◎
Inkscape 1.0からツールの操作説明が?
前バージョンの時は無かったと思うのですが今回はツールを選択するとそれに対応して画面下に操作方法の説明が出ます。
便利です。